7月5日に公開された映画「先生の白い嘘」をめぐり、公開前日に監督の三木康一郎氏のインタビューが問題視され、SNSを中心に批判が巻き起こっています。原作は人気漫画で、豪華キャストを迎えた注目作でしたが、監督の発言が作品の評価に影を落としています。
問題となった監督の発言とは？
- 主演の奈緒さんからインティマシー・コーディネーターの起用を求められたが、監督は「間に人を入れたくなかった」と拒否
- 性描写などの身体的な接触シーンで演者の心をケアするインティマシー・コーディネーターの必要性を理解せず
- 女性である奈緒さんが傷つく可能性を考慮しながらも、監督の意向を優先させた
問題の発端は、公開前日に公開された監督のインタビューでした。奈緒さん側からインティマシー・コーディネーターの起用を求められたにもかかわらず、監督は「間に人を入れたくなかった」と拒否したことを明かしました。インティマシー・コーディネーターは、性描写などの身体的な接触シーンで演者の心をケアするスタッフで、俳優が安心して演技に臨むために重要な役割を担っています。しかし、監督はその必要性を理解せず、女性である奈緒さんが傷つく可能性を考慮しながらも、自身の意向を優先させたのです。
この発言は瞬く間にSNSで拡散され、多くの批判を浴びることになりました。現代社会において、俳優の心身の安全を守ることは製作者側の責務であり、インティマシー・コーディネーターの存在意義は大きいと認識されています。監督の発言は時代錯誤だと指摘する声が相次ぎ、作品の評価にも影響を及ぼしています。
インティマシー・コーディネーターとは？その役割と重要性
- ヌードや性描写などがある場合に、俳優と制作サイドの意思疎通をはかり、現場の安全を守る存在
- 俳優が現場の空気に流されずに希望する条件を言いやすくなり、安心して演技に臨める
- 日本国内で活動している有資格者はまだ少数だが、その必要性は高まっている
インティマシー・コーディネーター（IC）は、ヌードや性描写などがある場合に、俳優と制作サイドの意思疎通をはかり、現場の安全を守ることを目的とした存在です。ICがいることで、俳優が現場の空気に流されずに希望する条件を言いやすくなったり、逆に監督側のリクエストを丁寧に伝えることに一役買ったりと、安心して性的なシーンの撮影を進めるために必要とされています。
アメリカに本部を置く団体が養成プログラムを修了した人に資格を認定していますが、日本国内で活動している有資格者はまだ片手にも満たないそうです。しかし、俳優の人権を守り、安全な撮影環境を整えることは製作者側の責務であり、ICの必要性は高まっています。今回の騒動を機に、日本の映画業界でもICの重要性が再認識され、より多くの現場で活用されることが期待されます。
「先生の白い嘘」のあらすじと問題の性描写シーン
- 主人公の高校教師が親友の交際相手からレイプを受け、心に深い傷を負う
- 加害者からの脅しや親友への裏切り行為から、被害を訴えることも断ち切ることもできずに関係が続く
- ある男子生徒との出会いが、主人公の人生を変えていく
映画「先生の白い嘘」は、奈緒さん演じる主人公の高校教師が、親友の交際相手（風間俊介さん）からレイプを受けるという衝撃的なシーンから始まります。それが性的な初体験でもあった主人公は、心に深い傷を負いながらも、加害者からの脅しや親友への裏切り行為から、被害を訴えることも関係を断ち切ることもできずに、何年にもわたって関係を続けていきます。
そんな中、主人公は心療内科に通いつつ高校での勤務を続けますが、ひとりの男子生徒（猪狩蒼弥さん）との出会いが、彼女の人生を大きく変えていくことになります。「歪んだ人間関係」と「性犯罪」、そして「男女の性」をテーマに、生きづらさを抱えた主人公の姿を繊細に描いた作品です。問題となった性描写シーンは、主人公の心情を表現する上で欠かせない要素ではありますが、俳優の心身の安全を最優先に考えるべきだったと言えるでしょう。
炎上の背景にある日本の映画業界の問題点
- 俳優の人権や安全への配慮が欠けている現状
- 監督の権力が強大で、俳優が意見を言いづらい風潮がある
- インティマシー・コーディネーターの認知度が低く、活用が進んでいない
今回の炎上騒動の背景には、日本の映画業界の構造的な問題点が浮き彫りになっています。まず、俳優の人権や安全への配慮が欠けている現状があります。特に性的な表現を含むシーンでは、俳優の心身への負担が大きいにもかかわらず、十分なケアが行われていないケースが少なくありません。
また、監督の権力が強大で、俳優が意見を言いづらい風潮があることも問題視されています。演技指導や表現方法をめぐって、監督と俳優の意見が対立することはよくありますが、俳優側が不安や懸念を表明しづらい環境があるのです。さらに、インティマシー・コーディネーターの認知度が低く、活用が進んでいないことも課題です。海外では一般的になりつつあるICですが、日本ではまだ浸透しておらず、その必要性も十分に理解されていません。
今後の日本映画界に求められる変化とは
- 俳優の人権と安全を最優先に考える意識改革
- インティマシー・コーディネーターの積極的な活用と育成
- 監督と俳優の対等な関係性の構築
今回の騒動を機に、日本の映画業界には大きな変化が求められています。まず、俳優の人権と安全を最優先に考える意識改革が不可欠です。性的な表現を含むシーンがある場合は、事前に十分な話し合いを行い、俳優の心身への配慮を欠かさないようにすべきでしょう。また、インティマシー・コーディネーターを積極的に活用し、育成していくことも重要です。ICの存在が当たり前になれば、俳優も安心して演技に臨めるようになるはずです。
さらに、監督と俳優の対等な関係性を構築することも欠かせません。監督の意向を尊重しつつも、俳優の意見にも耳を傾け、双方が納得できる形で作品作りを進めていくことが理想的です。権力関係ではなく、互いの立場を理解し合える環境を整備することが、より良い作品を生み出すことにつながるでしょう。
映画「先生の白い嘘」騒動から学ぶべきこと
映画「先生の白い嘘」をめぐる一連の騒動は、日本の映画業界に大きな課題を突きつけました。俳優の人権や安全への配慮の欠如、インティマシー・コーディネーターの必要性への理解不足、監督と俳優の権力関係の問題など、改善すべき点は多岐にわたります。しかし、この騒動をきっかけに、業界内で変化の兆しが見え始めていることも事実です。
今後は、俳優の心身の安全を何よりも優先し、インティマシー・コーディネーターを積極的に活用していくことが求められます。また、監督と俳優が対等な立場で意見を交わし、互いの立場を尊重し合える関係性を築いていくことも重要でしょう。この騒動から学んだ教訓を生かし、日本の映画業界がより健全で創造的な環境へと変化していくことを期待したいと思います。
