最近、清水幸詩郎さんが描く漫画『タコで、ごめんね。』がX(旧Twitter)で大きな反響を呼んでいます。この作品は、人口増加に伴い地上に見切りをつけた人間が”先祖返り”し、魚になって海に帰っていく不思議な世界を描いた物語。主人公の少年もある日突然、タコへの変身が始まってしまいます。この衝撃的な設定と繊細な心理描写が話題を呼び、多くの読者の心を掴んでいるようです。
今回は、作者の清水幸詩郎さんへのインタビューを交えながら、この独特な世界観の魅力に迫ります。
- 人間が”先祖返り”し、魚になって海に帰る不思議な世界
- ある日突然、タコへの変身が始まった主人公の運命は?
- 親友との絆に涙…読者の心を揺さぶる感動のストーリー
“先祖返り”現象が起きる世界観の設定とは?
『タコで、ごめんね。』の世界では、人口増加により地上に見切りをつけた人間が”先祖返り”し、魚になって海に帰っていくという現象が起きています。この”先祖返り”は、生存本能が海に還ることを察知しているため、海に呼ばれた人には誰にでも起こり得るとのこと。作者の清水さんは、「当たり前に人魚がいる世界」を想像した時に、この設定が自然な世界観になると考えたそうです。
また、”先祖返り”をした人は研究対象として施設に保護されますが、中には拒否して海へ逃げていく者もいるようです。完全に変身してしまうと、どのような変化が起きるのかは謎に包まれており、それが読者の想像力をかき立てています。
主人公の少年に突然訪れたタコへの変身
主人公の少年は、”先祖返り”現象を他人事のように考えていました。しかしある朝、鏡の前に立つと、自分がタコになりかけていることに気づきます。タコへの”先祖返り”は珍しい症例で、戸惑う主人公とは裏腹に、周囲からは大きな注目を集めてしまいます。
普通の人生を歩んでいくと思っていた主人公ですが、症状は急速に進行していきます。抑制薬で一時的に抑えられたものの、いずれ完全なタコになってしまうことは避けられません。不安で押しつぶされそうになりながらも、親友の存在に支えられていた主人公。彼の心情の変化が丁寧に描かれています。
親友との絆が生む感動のエンディング
完全なタコになる前に施設へ行くことを決意した主人公。出発の日、平静を装っていましたが、見送りに来た親友の前で涙を流し、感情を溢れさせます。すると親友は、「俺は天才博士になる男だ!研究者になってお前の側に一生いてやる」と力強く宣言したのです。
小さな頃からいつも主人公の側にいてくれた親友との絆。それは、これからどんな姿になっても変わることはありません。ラストシーンでの2人の別れは、読者の胸を熱くさせずにはいられません。
作者・清水幸詩郎さんが込めた思い
清水さんは当初、人魚をモチーフにしようと考えていましたが、タコの触手のようになった髪の毛を描いたらかわいかったため、タコをチョイスしたそうです。また、「人間である事がそんなに幸せな事なのだろうか」という疑念から、お魚になった方が幸せな人もいるかもしれないという思いを込めたとのこと。
作中で特にお気に入りのシーンは、タコがタコつぼに詰まっているようにトイレに詰まっている触手を描いた部分だそうです。そして、親友の「お前の側に一生いてやるからな」というセリフにも、清水さんのこだわりが感じられます。
SNSでの反響と作者からのメッセージ
X(旧Twitter)に投稿された『タコで、ごめんね。』は、2.2万件を超える「いいね」と多くのコメントが寄せられる反響を呼びました。普段は商業誌で活躍する清水さんですが、個人的に趣味で描いた漫画がこれほど注目されたことを大変嬉しく感じているようです。
読者やファンへのメッセージとして、清水さんは「こうした数人の友人に喜んでもらえればいいという気持ちで描かせていただいた超個人的な漫画に注目していただけて大変ありがたいです。これからもこんな感じの漫画を描いてSNSにアップしていくので、フォローしていただけたら嬉しいです」と語ってくれました。
『タコで、ごめんね。』が問いかける”人間らしさ”とは
『タコで、ごめんね。』は、一見非現実的な世界観ながらも、”人間らしさ”とは何かを問いかける作品です。”先祖返り”により姿が変わっても、主人公と親友の絆は揺るぎません。外見ではなく、心でつながっているからこそ、2人の友情は永遠に続くのです。
また、作者の清水さんが投げかける「人間である事がそんなに幸せな事なのだろうか」という疑問は、読者に深い余韻を残します。私たちは無意識のうちに、人間であることを当たり前だと考えがちです。しかしこの物語は、人間以外の姿になることで幸せを掴める可能性さえあることを示唆しているのかもしれません。
まとめ
『タコで、ごめんね。』は、SNSを中心に大きな話題を呼んでいる注目の漫画作品です。人間が”先祖返り”により魚になって海に帰るという独特な世界観、タコへの変身が始まった主人公の運命、親友との感動的な絆など、読者の心を強く揺さぶる要素が詰まっています。
作者の清水幸詩郎さんへのインタビューからは、この物語に込められた思いや創作の裏側が明らかになりました。一見非現実的でありながら、”人間らしさ”とは何かを問いかける『タコで、ごめんね。』。この作品が多くの人々の心に触れ、新たな視点を与えてくれることでしょう。