『メダリスト』のCGアニメーションが描く、フィギュアスケートの新時代到来!ポスト・アニメティズム的表現とは?

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2025年放送予定のTVアニメ『メダリスト』は、CGとセルアニメーションのハイブリッド作画によって、フィギュアスケートの演技シーンを革新的に描いています。本作の制作会社ENGIは、デジタルアニメーションに定評のあるスタジオです。果たして、『メダリスト』のアニメーション表現は、どのような特徴を持ち、アニメ史においてどう位置づけられるのでしょうか。

アイドルアニメから始まったCGとセルアニメのハイブリッド表現

  • 2010年代初頭から、アイドルアニメのダンスシーンでCGが活用され始めた
  • 手描きのセルアニメーションと、CGによるキャラクターの動きのギャップが課題だった
  • 最近のテクノロジーの発達と演出の洗練で、違和感のないクオリティを実現

『アイカツ!』や『ラブライブ!』など、2010年代のアイドルアニメでは、ダンスシーンにおいてCGが頻繁に用いられるようになりました。当初は、手描きのセルアニメーションとCGによるキャラクターの動きのギャップが目立つこともありましたが、最近ではテクノロジーの発達と演出の洗練により、違和感のないクオリティを実現しています。

さらに、バーチャルカメラやモーションキャプチャ、ロトスコープなどの技術を活用することで、実写映画やオープンワールドのゲーム空間のようなリアルな身体表現やマルチアングルの空間表現が可能となりました。こうした革新は、スポーツアニメにこそ顕著に表れています。

『メダリスト』が実現する、スムースな奥行き表現とリアルなカメラワーク

  • CGによるキャラクターの動きと空間のカメラワークが縦横無尽に映像化
  • 画面の手前から奥、奥から手前へのスムースな奥行きのある動きを表現
  • 視聴者の視点があたかもリンク上でキャラクターと伴走しているかのようなリアルさ

『メダリスト』では、CGによるキャラクターの動きと空間のカメラワークが縦横無尽に映像化されています。特に、画面の手前から奥へ、そして奥から手前へのスムースな奥行きのある動きが印象的です。

また、アニメの視聴者の視点があたかもリンク上でキャラクターと伴走しているかのようなリアルな表現が可能になっています。こうした「縦の構図」を採った奥行き表現は、かつてのセルアニメーション時代のテレビアニメでは不向きとされてきました。

セルアニメーションの限界と「アニメティズム」の誕生

  • セルアニメーションでは奥行き方向への運動を扱うのが難しかった
  • フラットで多平面的なイメージ群が水平方向にスライドする空間構成を「アニメティズム」と呼ぶ
  • 「シネマティズム」と対照的な、アニメ特有の時空間表現

セルアニメーションでは、背景画の上に複数のセル画を重ね、真上から撮影台のカメラを動かしながら撮影するため、奥行き方向への運動を扱うのが難しいとされてきました。メディア研究者のトーマス・ラマールは、このフラットで多平面的なイメージ群が水平方向にスライドするようなアニメ特有の空間構成を「アニメティズム」と呼びました。

「アニメティズム」は、奥行き方向へと収斂する映画カメラの単眼レンズ的なコンポジティングである「シネマティズム」とは対照的な時空間表現です。そのため、本来キャラクターの身体が画面いっぱいに躍動することが魅力のスポーツアニメでも、以前のテレビアニメではその表現がかなり制約されていました。

リミテッド・アニメーションの創造的な演出技法

  • 戦後日本のテレビアニメでは、「日本式リミテッド」と呼ばれる独特の演出が編み出された
  • 止め絵、3回パン、画面分割、透過光などの技法で、印象的なシーンを演出
  • 『巨人の星』の投球シーンなど、時間を引き延ばす「カイロス的時間」の表現

戦後日本のテレビアニメでは、「日本式リミテッド」などと呼ばれるリミテッド・アニメーションの技法を創造的に駆使した、止め絵、3回パン、画面分割、透過光などの独特の演出が編み出されました。例えば、『巨人の星』で星飛雄馬がボールを投げてからキャッチャーのグローブに届くまでに時間が延々引き延ばされるシーンは、印象的です。

精神科医でもある批評家の斎藤環は、こうした時間表現を、通常の物理的・客観的な時間感覚である「クロノス的時間」と対比して、「カイロス的時間」と呼びました。戦後テレビアニメに見られるカイロス的時間の表現は、歌舞伎などの日本の古典芸能や、戦後の大衆文化ではマンガからの影響が大きいと考えられます。

CGとデジタルコンポジットがもたらす「ポスト・アニメティズム」の到来

  • 21世紀のアニメーションでは、アニメティズムがアップデートされ、シネマティズムと接近
  • 新たな映像表現を「擬似シネマティズム」や「ポスト・アニメティズム」と呼ぶ
  • 『メダリスト』のスケーティングシーンは、ポスト・アニメティズム的な表現の一つ

CGやデジタルコンポジットが浸透した21世紀のアニメーションでは、かつてのアニメティズムが技術的進化とともにアップデートされ、ある意味ではシネマティズムと接近するような新たな映像表現が見られるようになっています。これを「擬似シネマティズム」や「ポスト・アニメティズム」と呼ぶこともできるでしょう。

『メダリスト』のスケーティングシーンは、まさにそうしたポスト・アニメティズム的な表現の一つだと言えます。CGとセルアニメーションのハイブリッド作画によって、フィギュアスケートの演技シーンを革新的に描き出しているのです。

『メダリスト』が切り拓く、アニメーションの新たな可能性

『メダリスト』は、CGとセルアニメーションのハイブリッド作画によって、フィギュアスケートの演技シーンを革新的に描き出すことで、アニメーション表現の新たな可能性を切り拓いています。かつてのセルアニメーションでは難しかった奥行きのある動きや、リアルなカメラワークを実現し、スポーツアニメの魅力を最大限に引き出しているのです。

同時に、『メダリスト』は、アニメ史における「アニメティズム」から「ポスト・アニメティズム」への移行を象徴する作品とも言えるでしょう。CGとデジタル技術の発展によって、アニメーションの表現の幅はさらに広がっています。『メダリスト』が描く、フィギュアスケートの新時代の到来は、アニメーションの新時代の到来でもあるのかもしれません。

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